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| | Nuitのひとりごと
16
アイビーを買って〜「St.Paul's
will shine tonight」
東京六大学野球で母校が9年ぶりに優勝したらしい。今朝の新聞に、グラウンドで喜ぶ選手達の様子がカラー写真で大きく載っていた。
9年前と言えば、ちょうど私がいた頃である。当時、優勝決定戦が月曜日に持ち込まれたときは、教授自らも講義を休講にしたりして蔦のからまる美しいキャンパスはもぬけのからになり、みな総出で神宮まで行って声をからして応援したものだった。神宮の青い空に紫の旗が大きく大きくはためいていた光景を私はだんだんと思い出した。
野球のことだけに限らず、「この日のことは絶対に一生忘れない」と何度思ったことかわからない。でも記憶とは自分が思うよりもはかないもので、その当時の記憶は輪郭があいまいになってなんだかおぼろげになり、確かに私はそこにいたという事実はあっても、はっきりとは思い出せなくなってしまう。今となっては学校にいたときのように1年2年と節目があるわけでもなく、空調が完備された窓も開かないオフィスビルで毎日毎日コンピュータの画面ばかりを見つめて、気がつくとあっという間に1年が過ぎていたりもする。
ランチで外に出たあと、お花屋さんの前を通ると、ガラスの可愛いプランターに植えられたとても小さなアイビーが秋の陽の光をいっぱいに浴びて、ポトスやサボテンと一緒にちょこんと並んでいた。
「すみません、あの、これ、室内でも大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。いつもお水半分くらい入っていればOKですよ」
「そうですか。じゃあ、これひとつください」
自分の机に戻って、買ったばかりのアイビーをサイドテーブルに置いてみた。今度はアイビーが私のことを応援してくれているような気がする。さあ、また午後のひと仕事である。
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