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さようなら、サムソナイト〜「Good bye, Samsonite」 今日、帰ってきたら、いつも2階の私の部屋の前に置いてあるはずのグレーのサムソナイトのスーツケースがなくなっていた。とうとう粗大ゴミで捨てられてしまったらしい。 そもそもこのサムソナイトは、ちょうど東西ドイツ統一の頃、父のドイツ長期出張の折に父が買ったものだった。サムソナイトのハードスーツケースの中では一番大きなサイズである。ここ数年はすっかり私の旅のお供だった。西へ東へ、世界中私と一緒に旅をした。おみやげ買いすぎて蓋が閉まらなくて上に乗っかって無理矢理閉めたり、空港の手荷物受取りでなかなか出てこなくて、「まだかまだか」なんてやきもきしたりはしょっちゅうだった。いつも必ず私のそばにいてくれて、私の荷物をちゃんと守ってくれて、私の思い出をいっぱい詰め込んでくれた大事なサムソナイトだ。 サムソナイトの異常に気がついたのは、昨年冬のホリデイシーズンのことだった。ロサンゼルスに住むボーイフレンドにL.A.の空港まで迎えに来てもらい、駐車場の彼の車までスーツケースを運んでもらっているとき、「なんだかこれ滑りが悪いな」と彼がつぶやいた。車のトランクにそれを乗せてはじめて気がついた。底面のキャスターのタイヤがすっかり磨耗して、中の芯が出てきてしまっている。これでは滑りが悪いはずだ。 日本に帰ってきて、彼の言うとおりさっそくメーカーに問い合わせた。なんと、キャスター1個につき4,000円もするという。しかも1個だけ直しても他もすぐ駄目になるので、4個全部取り替えないといけないらしい。おまけに修理も3ヶ月かかるそうだ。これでは、次回海外に行くまでに間に合わない。彼に話すと、 再びゴールデンウィークに、サムソナイトを連れてL.A.へ飛んだ。彼は仕事で迎えに来てくれなかった。自分でサムソナイトを彼の家まで運んだ。ますます滑りが悪くなっていてガタガタきてたけれど、もうすぐ直るんだと思ってがんばった。しかし、L.A.でサムソナイトの足が治ることはなかった。彼は修理屋さんを探しておいてくれるという約束なんてすっかり忘れてしまっていた。おまけに何を思ったか、夜中に突然「あなたはここに居て何になる?ここに居て何ができる?荷物まとめて出て行け!」と私に怒鳴りつけた。私はクローゼットに並べてあった洋服や、ドレッサーに広げた化粧品など、荷物を全部ざっとサムソナイトに詰めて、とにかくどこかへ行こうと思い、翌朝サムソナイトを引きずりながら、サンフランシスコ行きの便に飛び乗り、L.A.を経った。 サンフランのダウンタウンをひとりで散策していると、ユニオンスクエアの目の前にチャイニーズのやっている旅行カバン屋さんを見つけた。サムソナイトの修理が出来るか聞こうと思ってふらっと店に入った。が、思わず大きなソフトラゲージに心惹かれた。日本人のいいお客が来たと思ったかどうかはわからないが、お店のお兄さんは丁寧過ぎるほど優しくあれこれソフトラゲージの良さについて説明してくれた。私はずいぶんと悩んだ末、結局それを買った。 日本には大きなスーツケース2つ持って帰ってきた。父は「新しいの買ったんなら、この古いの、さすがにもう駄目だろうし、捨てていいか?」と聞いてきた。「元々お父さんのものなんだから、お父さんの好きにしていいよ」そう言い放ってしまった。そのせいで今日、私のいないうちにポイと捨てられてしまった。もう二度とあのサムソナイトは戻ってこない。 Samsonite サムソナイトの全てがわかります。 |
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2001/12/04
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